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 知事発言を検証し大学財源を考える(要旨)
 




        橋下知事の「大阪府立大学批判」発言を検証し大学財源を考える
      ― 大阪府「戦略本部会議『府立大学のあり方』」2資料に依拠して ―

                                                                         小 林  宏 至

                                           要 旨

1.橋下知事の「大阪府立大学批判」発言の三つの内容と検証の方法
   2009年2月頃から橋下知事による大阪府立大学に対する厳しい批判報道を耳にするようになった。同
 知事の「府立大学批判」発言は、次の三つに類別できる。その第1は、大阪府の財政難のなかで府立
 大学に100億円を超える「運営費交付金」を予算措置することの疑義、第2は、府立大学の「府政や地
 域への貢献度」に対する疑義、第3は、大阪府下に大阪市立大学と併せて二つの公立大学が存在する
 ことに対する疑義(「二重行政」なる批判)と市立大学との統合要求である。
  この小冊子は、橋下知事の「府立大学批判」をめぐる3発言・主張を大阪府「戦略本部会議『府立
 大学のあり方』(2009年9月8日)」において公開された2資料(「討議用資料」及び「参考資料」)
 に依拠して検証し、次の結論を得た。

2.事実とかけ離れている橋下知事の主張と府立大学の財源 
  まず第1の「財政難のなかで府立大学に100億円を超える予算措置」することの疑義発言の検証結果
 は次の通りである。
 @大阪府立大学の設置者である大阪府には国(総務省)から公立大学を設置していることに対する助
 成・交付金が「基準財政需要額」なる名称で、普通地方交付税交付金(=基準財政需要額−基準財政
 収入額)のなかに加算・措置されている。
 A2008(平成20)年度の当該「基準財政需要額」は98億9000万円であり、大阪府が措置する府立大学
 「運営費交付金」108億1200百万円の91.5%、実に9割を超える。
 B「参考資料」には、「運営費交付金」108億1200万円の他に、「基準財政需要額」98億9000万円及び
 「差し引き」9億2200万円の3数値が記載されている。「差し引き」9億2200万円は、大阪府の「純支
 出」に他ならない。
 C9億円余の府民負担で108億円の大学(日常的)運営を展開しているのが大阪府の現状であるが、こ
 の9億2200万円を府立大学「学生一人当たり純府経費額」とすれば、それは11万7,000円(府立大学学
 生数は7,900人)。この数値は、今年度開始の高校授業料無料化額11万8,800円と同水準である。
  以上から、国の助成措置(基準財政需要額)に全く言及せず、かつ大阪府の財政難を強調しながら
 「100億円超」の「府立大学交付金の廃止分を高校教育や医療、福祉分野に回す」などと、繰り返し府
 民に印象づけてきた知事発言は、あまりにも誇大数値であり、妥当性を欠いていると結論づけた。
                    
3.府民要求を受けとめる視点のない学生不在の府立大学像
 第2の府立大学の「府政や地域への貢献度」に対する疑義発言の検証結果は次の通りである。
  @同知事の要求する府立大学像は、「研究機関」に対する要請としては理解できるにせよ、その対象
  は公立大学である。文科省の指摘にもみられるように、公立大学は地域における高等教育機会の提供
  (ベクトル1)と、地域貢献(ベクトル2)のいわば二つの方向(ベクトル)への展開が期待される
  存在といえる。
  A大阪府実施の「府民アンケート」調査結果や大阪府ホームページの書き込みには、大阪府立大学あ
  るいは公立大学に対して「できるだけ安い授業料で多くの学生に大学教育の機会を与える大学」、あ
  るいは「裕福な家庭でなくとも大学で学べるチャンスを提供する大学」という方向(ベクトル1)と、
  「地域に密着して研究や学問を社会にわかりやすく伝える大学」等の地域貢献(ベクトル2)を併せ
  た実績や期待が表明されている。
  B同知事は、自らの主張・要求の対象が「研究機関」ではなく、「教育と研究」を目的とする公立大
  学であるという認識に乏しい。学生が登場しない「地域貢献」(ベクトル2)一辺倒の知事の主張は
  「大学像」とは言い難い。このような主張でもって自らが実施した「府民アンケート」の結果を受け
  とめることができるのかどうか、大いに疑問である。
    以上から、府立大学に対する知事の要求・主張は、妥当性を欠いていると結論づけた。

4.公立大学「二重行政」なる批判発言は正反対の論理に帰結
  第3は、橋下知事が「こんなバカなマネージメント」と主張される公立大学「二重行政」なる批判
 発言に関する検証である。この手順として、まず「運営費交付金」投入額について大阪府(大阪府大
 +大阪市大:108.12+132.43=240.55億円)> 首都大学東京(181.35億円)と算式で示した。同様に、
 ア:「基準財政需要額」、イ:「設置自治体の純経費(運営費交付金−基準財政需要額)」、ウ:
 「学生数」、エ:「在学生一人当たりの純経費」についても、大阪府立大学+大阪市立大学の加算値
 と首都大学東京を算式に示し、次の結果を得た。
 @「運営費交付金」にみられる2大学の加算値240億円と首都大学東京の181億円の比較を根拠に、橋
 下知事は「二重行政」と主張し、「こんなバカなマネージメント」と大阪府及び大阪市のこれまでの
 行政を批判している。
 Aしかし、ア〜エの算式を踏まえるならば、東京に比べて地域内総生産(GRP)が低く、国立大学数も
 限られている大阪地域において、公立大学に対する国の助成システム(基準財政需要額)を十全に活
 用しながら、東京都の0.54倍という半分程度の自治体(大阪市+大阪府)純支出(経費)でもって、
 首都大学東京の1.9倍に相当する広範な学生に、(しかも学生一人当たりの自治体純経費は大阪2大学
 平均25.1万円と、東京88.9万  円の3分の1)大学教育を受ける機会を提供するという公立大学の使
 命を果たしてきた  といえる。
   これらから橋下知事の公立大学「二重行政」なる批判は、正反対の論理に帰結する。
   以上、大阪府「戦略本部会議『府立大学のあり方』(2009年9月8日)」において公開された2資料
 に依拠し検証した結果、橋下知事による三つの府立大学批判発言は、いずれも妥当性に乏しいことが
 明らかである。橋下知事の府立大学批判論は、抜本的な見直しが必要である。 

5.府立大学財源の強化をめざして
  大阪府の地方交付税交付金に加算される「基準財政需要額」は、府立大学の財源にきわめて重要で
 あると同時に、次の二つの課題が指摘される。
  その一つは、「基準財政需要額」の「単位費用」は文科省から公表されてはいるが、各大学に対す
 る配分基準や実績は明確でなく、文科省の公表数値が「額面どおりには加算・交付されてはいない」
 という風聞もあることである。また、民主党政権のもとで、地方交付税の値切りがおこなわれている
 等々という新たな事態も予想される。
  今ひとつは、文科省『公立大学の財政』でみられるように、近年、「基準財政需要額」の基礎とな
 る「学生一人当たりの単位費用」の低下傾向が、かなり著しいことである。
  「地域主権」を重視し、地方交付税は「本来地方の税収とすべき財源を国が代わって徴収し、地方
 公共団体に再配分」するシステム(大阪府ホームページ)と解説する橋下府政にあって、上記2点に
 関する事情の解明と対策は、「厳しい本府の財政状況」のなかで府立大学財源を確保する上で重要か
 つ急務の課題と考える。

                          (こばやし ひろし 大阪府立大学名誉教授) 
         
 
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